あるなつのひのこと・・・ おかあさんはそとで せんたくものをほしていた。	きょうは、なにをしょうかな・・・ そとではむしのこえが にぎやかだった。
しばらくするとせんたくものを ほしおわったおかあさんが うちにはいってきた。	"さんぽにいこうか"おかあさんが いった。やった・・・ ぼうしをかぶり、 くつをはき、 きょうはどこにいくのかな。
そとはとてもあつく、あせがでてきた。 "ねえーねえーおかあさん どこいくの" "さあどこにいこうかな" おかあさんはおしえてくれなかった。	おおきなみちが どんどんちいさく なっていった。
そしていつのまにか ぼくよりもせのたかい くさにかこまれた。	こんどはすこしさかをのぼっていった。 いったいどこにいくんだろう。 ぼくはすこししんぱいになってきた。
さかをのぼりきったとき、 とつぜんめのまえから せのたかいくさがきえた。 そこは、いしころだらけの でこぼこみちが どこまでもつづいていた。	"ここはどこ"おかあさんにきいた。 "ここはおかあさんがこどものとき、 きしゃがはしっていたところ。 きしゃがはしらなくなってせんろが はずされてしまったのよ。" といった。
"めをとじてみみをすましてごらん。 なにかきこえるかもしれないわよ。 "と、おかあさんはめをとじた。 ぼくもめをとじた。きもちのいいかぜが ふいていた。	まわりはとてもしずかで、 きこえるのはかぜのおとと むしのこえだけだった。 "あれ、とおくでなにか おとがするぞ。"
おとはすこしずつちかづいてきた。 めをあけたらきえてしまいそうで、 じっとめをとじていた。	ちかづいてきたおとは、 きしゃのおとのようだった。
それはかぜとともに ぼくたちのまえをとおりすぎて いった。	おとがきえていった。
ぼくはめをあけた。	"おかあさん、 いまのはなあに・・・ "ときいた。 "おかあさんのこどもの ときのおもいでが とおりすぎたのかな。" といったおかあさん はわらった。
"きょうはあついね。"と いったおかあさんはそらに てをかざした。 ぼくもみあげた。 いまのできごとをすべて みていたのは、たいようだけ かもしれないとおもった。 そしてぼくとおかあさんは さっききたみちを もどっていった。